相続不動産を上手に売却
相続に関する不動産のご相談で最も多いのが、相続した土地・建物を実際には使わないので、売却したいというものです。
不動産の売却というイベントは、人生で何度も経験することではないため、経験値が圧倒的に少ないのが現実です。
誰が相続して誰の名義に相続登記をしてから売却をするのか、売却の時期や方法、等によって特例の適用の有無が変わり、売却にかかる費用や税金(相続税・譲渡所得税)が大きく変わる場合もあります。
より良い売却の方法、より良いタイミング、より良い特例の使い方など、専門家に相談して情報を把握したうえで、実際の売却に進みましょう。
誰が相続するか決まっていない不動産を売却する場合
相続財産を未分割のまま売却する場合には、各相続人が法定相続分に基づいて共同で相続し、相続人全員が売却したものと考えることになっています。
この法定相続分の割合に基づいて売却代金等を按分し、それぞれが税金を計算して申告することになります。
なお、売却してしまうと法定相続分でそれぞれが相続することを同意したと判断されます。
後に遺産分割協議をして法定相続分と異なる割合で代金を分割することは原則的には認められませんのでご注意ください。
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例は、土地の評価額を最大で80%減額するもので、相続税を減らす効果が大きく、実際にこの特例を使ったおかげで相続税がゼロになったというケースもよくあります。
この小規模宅地の特例の適用を受けるには、その他の様々な要件を満たし、その旨の相続税申告をする必要がありますので、必ず専門家に相談・確認してください。
空家を売却する場合
相続によって空家になった不動産を売却する場合では、そこが被相続人の自宅等で、他の要件を満たすのであれば、相続税について小規模宅地の特例を適用可能です。 被相続人の入院や老人ホームへの入所により、相続前から空家だった場合も小規模宅地の特例を適用可能な場合があります。
また、空家を売却する前提として建物を取り壊して更地にすることを検討される方も多いです。
仮に建物を取り壊して土地を更地にした場合、配偶者が相続する等で相続税に小規模宅地の特例を適用可能であっても、取り壊し後の1月1日現在で更地であれば固定資産税・都市計画税に住宅用地の特例措置が適用されなくなるためその後の固定資産税・都市計画税は以前の3~6倍になります。
相続してすぐ売却したいときの注意点
亡くなった人の自宅土地について、配偶者以外が相続税の申告期限(亡くなった日の10ヶ月後)より前にその土地を売却すると、小規模宅地の特例の80%の減額が使えませんので注意が必要です。
相続した財産を売却するときに、相続税以外の税金がかかるのですか?
相続で取得した財産を売却するときには原則として譲渡所得税が課税されます。相続するときに相続税がかかった場合であっても、その後売却するときにはさらに譲渡所得税がかかります。ただし、土地や建物を譲渡した場合、一定の要件を満たす場合に適用される特例があり、譲渡所得税を減額することができます。
この特例の主なものに、『相続税額の取得費加算の特例』、『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』、『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』があります。
これらの特例の適用を受けるためには必要書類を添えて所得税の確定申告をすることが必要です。特例の適用によって、納税額が数百万円変わることもあります。なお、期限もありますので、なるべく早めに準備・手続を進めるようにしてください。
相続不動産の売却をお考えであれば、相続・遺産分割協議・名義変更のとき(実際に売却をする前)から将来の売却時の税金のことを視野に入れて専門家にご相談されることをおすすめします。
相続税額の取得費加算の特例
この特例は、相続した土地建物を一定期間内に譲渡した場合には、納税した相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる(譲渡所得の計算上、経費とすることができる)というものです。
ちなみに、相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡した場合にこの特例が適用できます。
例えば、平成20年4月1日に相続開始(亡くなった)の場合には、平成23年4月1日が期限日になります。また、相続税を物納した場合でも利用できます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例